『ウイニングポスト8 2015』がPS3、PS Vita、PCで発売決定!  
というわけで今年もウイニングポストの「新作」が発表されました。
公式ツイッターによるとエディットデータの引き継ぎができるとのことで、ようやく毎年のリネーム地獄から解放されることになりそうです。やりだすときりがない作業ですから・・・。

 さて、ウイニングポストといえば「スーパーホース」。かつてはスーパーホースは特別な存在であり、GⅠは別格の強さを持つスーパーホースのみによって争われていたと言っても過言ではない作品もありました。シリーズを重ねるに従いそういったスーパーホース達は「ただの強い馬」となっていきましたが、その魂は受け継がれ、定番のライバル達はほとんどのナンバリングタイトルで強敵として立ちふさがってきました。
 そのスーパーホース達の中でも格別の存在といっていい馬がいます。その名はサードステージ。祖父の「皇帝」シンボリルドルフ、父である「帝王」トウカイテイオーに続く「第三の伝説」ともとれる名前を持つこの馬は、登場するほぼ全作品で三冠をすでに達成、またはほぼ確実に達成する能力を持っており、大抵はスーパーホースの頂点に君臨する存在として、1993年、初代ウイニングポスト発売以その看板を背負ってきました(その初代では仕様上ナンバーワンの存在ではありませんでしたが)。
 しかし、シリーズ誕生から20年以上経った今、その看板の存続の危機が目前に迫っています。サードステージの父たるトウカイテイオーは2013年8月30日に他界。今年誕生した幼駒がそのラストクロップとなっているのです。その子供たちがデビューするのは2016年。競馬史をなぞって展開するようになった「7」始まって以来の伝統「その作品最後の史実世代が産まれた翌年以降にサードステージなど架空スーパーホースが誕生」という形式を守るとすると、「ウイニングポスト8 2017」、つまり再来年のバージョンには「トウカイテイオー産駒のサードステージ」は存在することが不可能になるのです。なぜなら、この作品に登場するスーパーホース達の誕生する年は「2015年」になるからです。
 しかし、これは不幸なことでもなんでもありません。ただ時の流れと共に訪れた当然の事態といえるでしょう。
私の手元には「ウイニングポスト2 パーフェクトブック」という本があります。この本にはウイニングポスト2のプレー期間である30年の間に登場するすべてのスーパーホースが紹介されています。その中から、ゲーム開始年である1997年時点で現役のスーパーホースを抜粋し、その父達の現在を調べてみました。
ゲッコーストーム   父トニービン 2000年3月10日死去(享年17歳)
アイアンキング    父ホリスキー 2003年に種牡馬引退 2003年11月29日死去(享年24歳)
ダークレジェンド    父オグリキャップ 2007年に種牡馬引退 2010年7月3日死去(享年25歳)
クロスリング      父タマモクロス 2003年4月10日死去(享年19歳)
スーパーシュート   父サッカーボーイ  2011年10月7日死去(享年26歳)
メイジクラシック    父リアルシャダイ 2001年に種牡馬引退 2004年5月26日死去(享年25歳)
キャニオンキュート  父ニッポーテイオー 2000年に種牡馬引退 うらかわ優駿ビレッジAERUで余生を送る(現在31歳)
ユーエスエスケープ 父アイネスフウジン 2004年4月5日死去(享年17歳)
アウトオブアメリカ  父サンデーサイレンス 2002年8月19日死去(享年16歳)
ファーストサフィー  父ダイタクヘリオス 2008年に種牡馬引退 2008年12月12日死去(享年21歳) 
ミヤワンローズ    父メリーナイス 1999年に種牡馬引退  2009年3月1日死去(享年25歳)
サードステージ    父トウカイテイオー 2013年8月30日死去(享年25歳)
アンビリーバブル   父ギャロップダイナ 1994年に種牡馬引退 2006年2月2日死去(享年26歳)
チェリーバトル    父サクラチヨノオー 2001年に種牡馬引退 2012年1月7日死去(享年27歳)
メイジビーナス    父ホリスキー 上記
マンハッタンスター  父トニービン 上記
フジコウフラワー   父トウカイテイオー 上記
 ご覧の通り、現在まで生存しているのはニッポーテイオーただ一頭。2010年代まで生きていたのもオグリキャップ・サッカーボーイ・トウカイテイオー・サクラチヨノオーのみ。享年もだいたい20~25歳前後といったあたりで、テイオーの没年も極々平均的、むしろ長く生きたほうだと言えます。 
 血統が再現不可能となると、その名を繋ぐためには血統を変えていかければなりません。しかしこれにはやはり複雑な思いがあります。例を一つ挙げさせていただくと、ウイニングポスト7無印版(史実世代はディープインパクト世代まで)では、ダークレジェンドの血統はジェイドロバリー×ドリームビジョンというものになっていました(当然オグリキャップはまだ生存していた)。しかし次作「2006」以降はオグリキャップ×ライデンリーダーというものに変更されています。おそらくは変更に対する反発が大きかったのでしょう。「ダークレジェンド=オグリキャップの後継者」というイメージはサードステージのそれと並ぶほど強いものでした。
 しかし、今作「8」のダークレジェンドの父はクロフネに変更されています。理由は簡単で「2012年にオグリキャップの産駒が産まれることは物理的にありえないから」です。 これは仕方ないことなのです。無情な時の流れがイメージと実際を噛み合わせることができなくなるほどに流れてしまったのです。そして、時の流れがサードステージのイメージをも押し流してしまう時はもう目前まで迫っているのです。
 これは私的な意見ですが、トウカイテイオー産駒ではないサードステージなど存在する意味がない、むしろ存在してほしくないと思います。 「皇帝」、「帝王」からの「第三の」という流れがあってこそ「サードステージ」という名前に意味がある。他のスーパーホースとは訳が違う。例えばユーエスエスケープはアイネスフウジンの死後サニーブライアン、そしてミホノブルボンと父が移り変っていますが、これはこれで問題ないのです。なぜなら、「エスケープ」すなわち逃げの名馬が父であれば「ユーエスエスケープ」という名前に意味は通るからです。先述のダークレジェンドも、一度ジェイドロバリーにした理由は解せませんが、クロフネならば芦毛伝説の継承者としての筋は一応通ります。
 しかし、「サードステージ」という名前には、トウカイテイオーの代わりとしてそこに魂を吹き込めるような代わりがいないのです。ディープインパクトの父サンデーサイレンスもまたまぎれもない名馬ですが、サンデー、ディープに続く第三、と言われてもピンと来ないでしょう。なぜなら、サンデーサイレンスの現役時代は、いくらすごいと聞かされようとも、日本の競馬ファンにとって「よそでの出来事」だからです。
 個人的には、2017年度を持ってサードステージの名はお蔵入りとして、トウカイテイオー産駒でそれにふさわしい馬が誕生した時に提案される、という形にしてほしいのですが(そういうイベントはすでにあるし)、おそらくはそうはならないでしょう。ちょうど父に記憶に残る名馬・ステイゴールドを持つ稀代の名馬オルフェーヴルが2017年に種牡馬デビューということで、これが父となるのかもしれません。
 しかし、もっとぶっ飛んだ選択肢もあるかもしれません。 それは現在現役の種牡馬の中でわずか2頭しかいない「日本ダービー馬の父を持ち自身も日本ダービーを制している馬」のうちの一頭。彼もまた2017年に種牡馬デビューを迎えます。その馬の名は
ロ ジ ユ ニ ヴ ァ ー ス 
・・・まあ、ないかw